IT契約書専門の作成・チェックサービスを提供している、行政書士の坂本倫朗です。

この記事では、映像制作の契約書で気を付けるべきポイントについて行政書士が解説します。

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契約書を交わさずに仕事をすることはキケンです

私は行政書士として法務の仕事をしていますが、前職はエンジニア兼クリエーターとしてお仕事をしていたこともあり、エンジニア、ウェブデザイナー、映像クリエーターに友人・知人が多いです。
今、法務の仕事をするようになって、周りを見回すと、
契約書を交わさずにお仕事を受注している人が多いように思います。
私はこの状況を「ヤバイ」と思っています。

映像編集等の仕事をする人の多くは、職人気質なものを持ち合わせており、
仲間内で仕事をすることが多いことから、
「信頼関係」という名のもとに契約書を交わさずに仕事をしています。

私も、かつては、そっち側の職人的な仕事をしていたので、気持ちはわかります。
しかし、法務の仕事をするようになって、実際にトラブルを目にすることも多くなりました。

トラブルなく仕事をしてもらいたい。
そんな思いから、私は「相手を信頼して契約書を交わさない」という仕事のスタイルを
改めてもらうように発信を続けています。

「相手のことを信じている(し、いちいち文書を交わすのは面倒だ)から契約書を交わしたくない」
と思っている方にも、
契約書を交わすことで、お互いがより安心して仕事をできるということを知ってほしいと思います。

そう、契約書を交わすのは、「お互いに時間を取られるマイナスなもの」ではなく、
「お互いがより安心して仕事をできる、プラスに作用するもの」なのです。

映像制作を請け負うときに契約書面で気を付けること

以下では、映像制作を請け負うときに契約書面で気を付けることをご紹介します。
なるべくわかりやすい言葉で説明しようと思います。
これから契約書を交わすときには、次の7つのポイントを重点的に確認してください。

1業務の範囲が明確に書いてあるか?

1業務の範囲が明確に書いてあるか?

2納品方法は明確になっているか?

3支払いがいつであるか?

4撮影をする場合、現場の仕事は明確か?

5知的財産権の扱はどうなる?

6解約の条件はどうなっている?

7再委託できるか?

順にみていきましょう

1業務の範囲が明確に書いてあるか?

まず一つ目は、「業務の範囲が明確に書いてあるか」です。

どの契約書についてもいえることですが、請負業務の契約書では、まず業務の範囲が明確になっているかを確認してください。

たとえばこんな契約書は危険です。

乙は以下の業務を受託する
1.甲の指定した場所での撮影
2.撮影した映像素材・画像素材をもとにした映像の編集業務
3.前各号に付帯した一切の業務

この「3.前各号に付帯した一切の業務」が危険なのです。
「付帯する」というのは、「関連する」と読み替えることもできます。
つまり、「撮影や編集に関係していることは、私は何でもやりますよ」と言っているに等しく、
意地の悪いクライアントだったら、この契約書をもとに、なんでもやらされる可能性があります。

業務内容がはっきりしてないと、危険ですよね?

いろんな方のトラブルの内容をお聞きしていると、「あとからあとから、追加業務を依頼されて、業務が終わらない」という相談が一番多いように思います。

こんなことがないように、業務内容がはっきりと書いてあるか確認をしておきましょう。

2納品方法は明確になっているか?

映像の納品方法は様々です。
指定したサーバ環境にアップロードするほか、DVDやSDカードで納品するといった指定もいまだに多くあります。
また、納品するときの映像のファイル形式についいても、様々です。
納品したファイル形式がクライアントの思っている形式と違うと、エンコードしなおすことになります。
エンコードのし直しは、結構な時間をとられます。
無用な手間を省くために、納品形式はしっかり契約書に指定してあるようにしましょう。

3支払いがいつであるか?

先に紹介した「あとからあとから、追加業務を依頼されて、業務が終わらない」という相談の次に多いのが、「終わった仕事に報酬が振り込まれない」という相談内容です。

そういう事例のほとんどはクライアントのキャッシュフロー事情によるものですが、
契約書の書き方で少しは回避できます。

たとえば、支払日について「納品後直ちに支払う」といった書き方をしている契約書をみることがあります。
これは契約書としてNGです。

「直ちに」というのは法律用語でもあり、「即時に」、「まさにすぐに」、という意味で用いられます。 どんな理由があっても遅れてはならない、といった表現ですが、じゃあ具体的に「直ちに」っていつでしょう?
一時間後?
一日のうち?
一週間以内?
そんなの、人によるから、わからないですよね。
つまり、この書き方は、いつ支払うか決められていない契約内容なのです。
「直ちに」というのは、具体的な日にちが書いていないので、結局は読み手の解釈によることになります。

そんなあいまいな書き方でなく、「請求付きの翌月末までに支払う」といったはっきりとした書き方の方がお互いごまかす余地がなくなってよい書き方なのです。

4撮影をする場合、現場の仕事は明確か?

いろんな人が集まる場所で撮影を行う場合、全然知らない別会社が現場の指揮を執っていることが多いです。
全然知らない別会社からあれこれ支持をされるのは、請け負う側としてはストレスになります。
自ら主体的に業務以外の仕事を担当するのはよいとしても、知らない人に顎で使われるような状況は避けたいものです。

ですから、「現場では撮影業務のみを行う」等はっきり書いてあった方が安心です。
クライアントの直接の指示には従うべきですが、それ以外だと、撮影現場内では自らの意思で動けるほうがずっと仕事がしやすく、気分良く仕事できます。

5知的財産権の扱いはどうなる?

映像に使用した素材は、相手の著作物とすることが一般的です。
でも、元から自分が持っていた音声、音楽、画像や映像素材の中には著作権が渡せないものもあるかもしれません。
そういった手放せない著作権については、しっかり契約書で明記しておきましょう。

イラストを使用する場合の、イラストの使用権についても明確に記載しておきます。

納品してずいぶん後になってから「世間常識的にイラストの著作権と使用権は別々で、イラストの使用権は渡していないです」
という主張をする人もいます。
法的な立場からすると、後出しで権利を主張する方がおかしいのです。
こんな仕事の仕方ではトラブルになります。
権利を主張するのがおかしいということではありません。権利を主張するのであれば、明文化した契約書を交わしておくべきであるということです。

使用権を主張するのが悪いと言っているのではなく、トラブルを避けるために権利は定めておいた方がよいということです。

6解約の条件はどうなっている?

解約とは、仕事のキャンセルということです。
契約書をたくさんみていると、「契約はいつでも解約できる」という危険な内容をみることが、けっこうあります。

途中で解約されることは、仕事を請ける側には不利な内容です。

百歩譲って途中で解約されることがあったとしても、作業した分の報酬はもらいたいですよね。
それなら「クライアントの都合で中途解約するときは、解約までの作業料をもらう
という内容にしておくべきです。

こういったことをおろそかにしたせいで、
契約を一方的に解約されるということも目にしました。
たいていは、受託者が泣き寝入りすることが多いです。

こういったトラブル」を回避するためにも、契約書は慎重に読み込む必要があるのです。

7再委託できるか?

フリーランスであれば、一人で仕事を完結することは少ないと思います。
普段から別の会社や個人事業主と一緒に仕事をやっているのであれば、
再委託がしやすい契約書にしておきましょう。
業務委託の部分や全体の仕事を別の人に振ってしまうことを再委託といいます。
契約書によっては「再委託を認めない」とか、「書面を交わすと再委託できる」と書いてありますが、
この内容だと再委託が難しくなります。

普段から再委託を前提とした仕事のスタイルをとっているのであれば、
再委託をすることができる」といった契約内容のほうがよいです。

再委託ができない契約書になっている場合は、
契約締結前にクライアントに相談して、契約内容を見直してもらいましょう。

契約書に時間を取られたくないのであれば、プロに任せてください。

なるべく易しく書いてみましたが、どうでしたか?

過去の私がそうだったから、よくわかりますが、そもそも契約書は見慣れていない人には、一読しても頭に入ってきません。

当事事務所には、「契約内容が有利なのか不利なのかだけでも知りたい」という相談も多いのです。

契約書に時間を取られたくないのであれば、プロに任せてください。

「契約書をチェックしてほしい」、「有利な条件を提示できるよう、契約書を作成してほしい」といったご依頼はIT契約書作成のミカタにお問い合わせいただければ、著者が相談に対応いたします。