利用規約作成の専門サービスを提供している、行政書士の坂本倫朗です。
この記事では、オンラインセミナーのサービスを作るときの利用規約について行政書士が解説します。
これからオンラインセミナーのサービスを始める事業者の方は、参考にしてください。
Contents
利用規約とは何か
最初に、利用規約とは何かという話をします。
利用規約の内容をざっくり説明すると、それは「権利と義務」について記載されています。
利用規約とは、何らかのサービスを運用するためのルールブックです。
利用規約は、 サービス提供者とユーザー全員のみなさんに適用されます。
こんな風に、利用規約では、1対多数の契約を行うための文書を作成します。
つまり、利用規約には事業者とユーザーとの間の約束が記載されます。
利用規約には、サービス提供者とユーザーの権利義務が記載されていると覚えておいてください。
利用規約は絶対に必要か
「先生、最初は無料でやるから、その無料期間は利用規約は必要ないでしょう?」
という相談をいただくこともあります。
いいえ、無料のサービスであっても、利用規約は必要であると答えています。
たとえば、次のような問題が起こったときに、利用規約なしでどのように対応するかを考えてみてください。
- ある日のZoomを通して行ったサービスが4,5分止まってしまった。ユーザーから、「大事なところが聞こえなかったから、今回のレッスンを補講してほしい」とお願いされた。
- ユーザー間で嫌がらせなど問題行動を繰り返す人がいる。その人にサービスの利用をやめてもらいたいと考えている。
- あるユーザーがサービス内に投稿したものについて、第三者から「私の作品の盗作であるから消してほしい」という依頼があった。
こういった問題の対応で交渉や相談をするには、たくさんの時間と手間がかかります。
無料サービスでもこういった問題が起こることが起こりえるのです。
こんなときに、利用規約を活用すると、話を円滑に進めることができます。
たとえば、利用規約をもとにこんな話し方ができます。
「すみませんが、利用規約に記載している通り、補講はできません。」
「すみませんが、利用規約に記載している通り、禁止事項にあたるので退会していただきます」
「すみませんが、利用規約に記載している通り、ユーザー御自身でトラブルを解決していただきます」
利用規約を周知することで、「そんなことはやめておこう」と考えるユーザーも増えるでしょう。
利用規約を用意することは、事業者にも利用者にもメリットがあります。
オンラインセミナーの利用規約に入れるべきこと
一般的には次の内容を利用規約に入れます。
- 料金や支払方法
- サービスの提供内容
- 入会手続き
- 退会時の手続き
- 禁止事項あるいは、守ってほしいこと
- 反社会的勢力の排除
- 免責事項
- サービス内容を変更するときについて
- 利用規約を変更するときのルール
- 損害賠償
- 知的財産権(著作権など)
- 個人情報・プライバシーの取扱い
- 免責規定
- 裁判管轄
契約の意味もあるので、「料金や支払方法」と、「レッスンの内容を含む、サービスの提供内容」は、
絶対に記載してください。
この2つが抜けていると、もはや利用規約とは呼べません。
さらに、誰が読んでも読み間違えないような分かりやすく明瞭な文章にしましょう。
独自の方法など企業秘密を伝授する場合は、秘密保持に関わる内容も追加するべきです。
オンラインセミナーの利用規約を作成するときに注意する点
利用規約を作成するときに、文章の組み立てにばかり注意が向きがちですが、
オンラインセミナーの利用規約を作成するときに大事なのは、運営全体を考えておくことです。
既に書いてきたように、利用規約は「トラブルの対処マニュアル」の役割も果たします。
サービス全体について考えるとはどういったことかというと、例えば次のようなことを考えておくことです。
- 講師の通信が不具合の時にどうするか?
- ユーザーの通信が不具合の時にどうするか?
- 講師が病気の時どうするか?
- ユーザーが休むときにどう対応するか?
- ユーザーさん同士のトラブルにどう対応するか?
また、個人情報保護について、プライバシーポリシーを定めておく必要があります。
プライバシーポリシーについて
プライバシーポリシーと利用規約をまとめて一つの文章にする事業者がありますが、推奨されません。
法的な役割が違うからです。
また、EUではプライバシーポリシーと利用規約を一緒に書くことは認められておらず、EUの基準に準拠することを目指す個人情報保護法では、近い将来、プライバシーポリシーと利用規約を一緒に書くことを規制するかもしれません(これは著者坂本の推測です)。
慌てないようにしておきたいものです。
特定商取引法に基づく表記について
特定商取引法に基づく表記については、法規制があります。
書かないといけないものがありますが、法律が難解であり(プログラミングコードでいうスパゲティーコードの状態になっています)そのすべてを理解している方は少ないです。
他所を見習うのではなく、必ず法的根拠を確認してください。
ポイントの活用について注意するべき点
オンラインセミナーのサービスにおいては、サービス内でポイントを活用するものが多く見受けられます。
ポイントを発行する場合は資金決済法の影響を受けます。
ポイントがプレゼントされるものであれば、ほぼ問題はないですが、あらかじめポイントを購入し、そのポイントから受講料を払う仕組みであれば、資金決済法の「前払い式手段」にあたります。
「知らなくて違法状態でした」とならないよう、この場合はも必ず法規制とその対処法を確認してください。
オンラインセミナーの利用規約を作成するときにやってはいけないこと
最近は周知されていますが、「他社のオンラインセミナーのサービス事業者の丸コピー」はやってはいけません。
過去の裁判例でも、他社の利用規約を盗用し、著作権違反を認めたものがあります。
他社の事業者を参考にする分には問題ないですが、必ず自社で作成したものを掲載するようにしましょう。
不安があるときは専門家のチェックを
しっかりした利用規約を作成する場合や、作成した利用規約をチェックしてもらう場合は、専門家に依頼します。
専門家とは、一般的には、弁護士や行政書士です。
インターネット上で専門家を検索するとたくさん見つけることができます。
「最新の法律へキャッチアップするのが大変」
「以前作成したまま時間がたっているので、法律的に問題ない内容か不安だ」
そんな場合も、専門家に頼んでチェックしてもらうこともできます。
専門家とは、一般的には、弁護士や行政書士です。
インターネット上で専門家を検索するとたくさん見つけることができます。
専門家を選ぶポイントは、次の通りです。
- オンラインセミナーについての、IT法務の経験が十分であるか?
- ウェブの技術面を理解しているか?
- 常に礼儀正しく対応してくれるか?
- 話が分かりやすいか?
- 間違っていること進言したり、きちんと意見を言ったりしてくれるか?
- 作成だけでなく、法律的な質問に答えてくれるか?
インターネット上で探す場合、相性もあるのでどの専門家が正解とは言えません。
御自身に合ったところを選択されてください。
当事務所にご相談の場合は、まずこちらをご確認いただくようお願いします。
【追記】利用規約を作って終わりにしないようにお願いします!
法律は目まぐるしく変わっていきます。
法律に合わせて利用規約を変更する必要が出てきます。
また、サービスを変更したときに、サービスに合わせた利用規約変更が必要になるかもしれません。
一度作って終わりにすることなく、ぜひ、定期的に見直すようにして下さい。
そのことが、事業者も、ユーザーも守ることにつながります。
【お知らせ】
ウェブサービスをトラブルから守る利用規約の運用方法アマゾンから販売しています。
利用規約を作成するときに注意することだけでなく、その先の、利用規約を作成した後に注意することを記載しました。
本書を通して、サービスの開始前に利用規約の運用面で注意することを知っておきましょう。
運用上の手間を減らしてくれるはずです。