Webサービス業界で増える投げ銭・ポイント機能の導入背景

近年
Webサービスやアプリにおいて「投げ銭」や「ポイント」機能を導入する動きが加速しています。
YouTubeやTikTokのスーパーチャットに代表されるように、
クリエイター支援型のマネタイズ方法が主流になりつつあります。

これに伴い、
中小のWeb制作会社やスタートアップも
独自の投げ銭システムやポイント制度を自社サービスに組み込む事例が増えています。
ただし、
このような機能を導入する際には「資金決済法」に関する理解が不可欠です。

ユーザーとの関係強化やマネタイズ手法としての重要性

Webサービスにおけるマネタイズは多様化しています。
広告収入に依存しない方法として
ユーザーがクリエイターやサービス提供者を直接支援できる仕組みが注目されています。

このような支援方法はユーザーとの距離を縮め、
サービス継続のモチベーション維持にもつながるため
非常に有効な手段とされています。

実際に導入しているサービス事例

例えば、
音声配信サービスのstand.fmでは「レター」と呼ばれる機能で投げ銭が可能です。

またPixiv FANBOXやnoteでは
ユーザーが作者に直接支援する制度が整っています。

これらの成功事例に影響されて、
今や様々なニッチな分野のWebサービスが
このような支援型マネタイズ機能を模索・実装しています。

資金決済法とは?押さえておきたい基礎知識

資金決済法(正式名称:資金決済に関する法律)は、
電子マネーや仮想通貨、前払式支払手段などの取扱いに関して、
その安全性と利用者保護を目的として制定された法律です。

特に、Webサービス業界で「投げ銭」や「ポイント」などの仕組みを導入する場合、
この法律に抵触する可能性があるため、
その基本的な枠組みを理解しておくことが重要です。

資金決済法の大きな特徴の一つは、
「貨幣に類する価値のやり取り」を監督・規制している点です。
具体的には、次の3つの制度が大きな柱となっています。

  1. 前払式支払手段(例:プリペイドカードやアプリ内ポイント)
  2. 資金移動業(例:PayPayやLINE Payなどの送金サービス)
  3. 仮想通貨交換業・電子決済手段等取引業(例:ビットコインやステーブルコインの取り扱い)

前払式支払手段とは

Webサービスにおいてよく問題になるのが「前払式支払手段」です。
これはユーザーが事前に金銭を支払い、発行者が提供するサービスの中で
その価値を使用することができるものを指します。

たとえば、1000円分のポイントを購入し
そのポイントをサービス内で動画を購入したり。
アイテムに交換したりできるような仕組みが該当します。

この場合、一定の残高や発行条件を超えると
「資金決済法上の届出」が必要になるほか
未使用残高の保全措置や報告義務も発生します。

仮想通貨とステーブルコインの違い

さらに、2023年の改正により「電子決済手段等」が定義され、
ステーブルコインのような、法定通貨と連動するデジタルトークンも規制対象になりました。

これにより、ブロックチェーン技術を活用して開発された新しい支払い手段や投げ銭機能も
資金決済法に基づく登録や届け出が必要となるケースが出てきています。

注意すべきポイント

・ユーザーが購入するポイントが換金可能か
・そのポイントが他人に譲渡できるか
・残高を管理する体制が整っているか

こうした条件によって
「法的義務」が変わってくるため
Webサービスの企画段階からの法的チェックが不可欠です。

行政書士が解説:ポイント制度で違法になるケース

ポイント制度は、多くのWebサービスやアプリで導入されている便利な仕組みです。
ユーザーの継続利用を促し、収益性を高めるマーケティング手法として非常に有効です。
しかし、この制度設計を誤ると「資金決済法」や「資金移動業法」に違反するリスクが生じます。

特に「前払式支払手段」に該当する場合には、法律上の届出義務や運用管理上の制約が発生します。
それを知らずにシステムを構築してしまうと、後に法的トラブルや行政指導の対象となりかねません。

よくある違法のケース①:資金移動とみなされる設計

ユーザーがポイントを購入し、そのポイントを他ユーザーに送ることができる機能
これは「送金」に近い行為として扱われる可能性があります。
このような仕組みは「資金移動業」に該当する恐れがあり、金融庁の登録が必要です。

例えば、AさんがBさんに100ポイントを送ることができ、
そのポイントがBさんに現金等と交換可能な形で使われるならば、
これは単なるサービス内のやり取りではなく「価値の移転」として法の規制を受けます。

よくある違法のケース②:返金・換金が可能な設計

ユーザーが購入したポイントを現金に戻せるような仕組みを設けている場合も注意が必要です。
たとえば「一度購入したポイントはいつでも返金可能」といった制度は
ポイントが実質的に電子マネーとして機能していると見なされ、
資金決済法の規制を強く受けることになります。

返金機能を持たせる場合は
銀行等との提携や、複雑な登録手続きが必要になってくるため
慎重に検討する必要があります。

よくある違法のケース③:ポイントが外部サービスでも利用可能

自社サービス内だけで完結せず、
提携先の複数サービスや他社店舗などでもポイントを使えるようにした場合、
発行主体の管理が不明確になるため
「前払式支払手段(第三者型)」として法的届出が必要です。

届出を怠ったまま制度を導入してしまうと
重大なコンプライアンス違反となり
罰則の対象となる可能性もあります。

行政書士による制度設計サポートの必要性

これらの法的リスクは、ポイント制度の導入初期段階であれば回避可能です。
行政書士は、制度の設計段階でその法的適合性をチェックし
必要な場合には金融庁への届出や管理体制の整備支援を行うことができます。
また、届け出が不要な運用方法に制度設計を変更する支援も行えます。

Webサービスを提供する企業にとっては
ユーザー満足度を高めるためのポイント制度が
逆にビジネスの継続を脅かすリスクにならないよう、
専門家の支援を活用することが重要です。

Webサービス展開と資金決済法の実務対応

首都圏ではスタートアップのWebサービス開発が盛んです。
その中で、ポイント制度や課金機能を導入する際に
「法律の壁」に直面する企業も少なくありません。

導入前に相談があったケース紹介

東京都内で新たに動画プラットフォームを立ち上げた企業が
投げ銭機能の導入を検討していましたが、
事前相談の結果、
想定されていた仕組みでは資金決済法の対象になることが判明しました。

そのため
制度設計を見直し、プリペイドではなく「単発課金」の形式に変更することで
リスクを回避することができました。

投げ銭・ポイント機能の法的チェックリスト

法的リスクを避けるには
制度導入前のチェックが不可欠です。
以下は行政書士として実務上確認している主なポイントです。

導入前に確認すべき5つの視点

  1. ポイントは前払いか、都度課金か
  2. ユーザー間での価値の移転は可能か
  3. 現金化や返金の仕組みがあるか
  4. 他社や他サービスでの利用を想定しているか
  5. 発行残高の管理体制が整っているか

これらの視点を整理した上で
資金決済法や関係法令との整合性を確認する必要があります。

行政書士による事前アドバイスの重要性

制度設計段階で行政書士に相談することで
違法性のある仕様を避けることができます。

開発会社はこの法律に気づいていなことが多く、リリース前に相談いただいた場合にリリース時期を変更せざるを得ない場合がありました。

また、
必要に応じて届出書類や内部規程の作成支援も可能です。

まとめ

投げ銭やポイント制度はWebサービスの収益化に大きく貢献します。
しかし、
その導入には資金決済法などの法的な配慮が不可欠です。
知らずに導入した結果
行政指導やサービス停止につながることもあります。

制度設計の初期段階から法的な視点を取り入れ
安心してユーザーに提供できるサービスを構築しましょう。

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