【提供事業者向け】AIを組み込んだ自社サービスの利用規約は「著作権・情報漏えい・責任」の3点で決める|経産省チェックリストを提供者側から読む

この記事の結論

この記事は、ChatGPTなどの生成AIを使う側ではなく、生成AIを組み込んだWebサービスやSaaSを提供する事業者に向けたものです。自社サービスの利用規約で、通常の規約に加えて決めておくべきことは、次の3つに集約されます。

  1. 著作権:利用者が入力したものと、AIが出したものの権利を誰が持ち、どう使えるか
  2. 情報漏えい:利用者が入力したデータを、提供者や外部のAI会社がどう扱うか
  3. 責任:AIの出力が間違っていたり、他人の権利を侵害したりしたとき、誰が責任を負うか

経済産業省が2025年2月18日に公表した「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」も、AIへの入力(インプット)と出力(アウトプット)を分けて、この3つにあたる点を確認するよう求めています。チェックリストはAIサービスを使う側のためのものですが、提供する側から読めば、規約に書いておくべきことの一覧になります。

なぜAIサービスでは、この3つが問題になるのか

これまでのWebサービスの利用規約は、会員登録、料金、禁止事項、免責、解約といった項目が中心でした。生成AIを組み込むと、利用者が入力した文章やファイルが提供者のシステム、場合によっては外部のAI会社に渡ります。そしてAIは、提供者も予想しきれない文章や画像を返します。

たとえば利用者は「自社の機密情報を入れたら、AIの学習に使われるのではないか」と不安に思います。一方で提供者は「出力に誤りがあっても責任は負えない」と考えます。この食い違いを規約で決めておかないと、問い合わせやクレームのたびに個別に説明することになります。

1. 著作権:入力と出力の権利を決める

入力したものの権利

利用者が入力した文章や画像の権利は、利用者に残るのが原則です。規約では「提供者は、入力されたデータの権利を取得しない」こと、そのうえで提供者がサービスの提供に必要な範囲で使えることを書きます。

出力の権利と使い方

AIが出した文章や画像を、利用者が商用で使えるのか、改変してよいのかを定めます。AIの出力に著作権が生じるかどうかは個別の判断になるため、「権利が利用者に帰属する」とだけ書くのではなく、「提供者は出力について権利を主張しない」「利用者が自由に利用できる」という書き方を検討します。

他人の著作物を入力させない

利用者が他人の著作物や個人情報を無断で入力しないことを、利用者側の約束として定めます。著作権の問題は、出力だけでなく入力の段階からも生じるためです。

2. 情報漏えい:入力データの扱いを決める

何のために使い、いつまで保存するか

利用者が入力したデータを、提供者が何のために使うのかを書きます。「サービスの提供のため」に限るのか、「品質改善のための分析」にも使うのかで、利用者の受け止め方は大きく変わります。保存期間と、退会時に削除するかどうかもあわせて定めます。

AIの学習に使うか

入力データをAIの学習(モデルの改良)に使うかどうかは、利用者が最も気にする点です。使わないなら「使わない」と明記します。使う場合は、その範囲と、利用者が断る方法(オプトアウト)を書きます。

※オプトアウト:利用者が申し出て対象から外れる仕組み。

外部のAI会社に送るか

自社でAIを開発せず、外部のAI会社のAPIを使ってサービスを作るケースは多いはずです。その場合、入力データは外部の会社に送られます。送り先、送られるデータ、送り先での扱い(学習に使われない設定かどうかなど)を、利用規約とプライバシーポリシーに書きます。

※API:外部のサービスの機能を、自社のサービスから呼び出して使うための仕組み。

プライバシーポリシーと食い違わせない

入力データに個人情報が含まれる場合、利用規約だけでなくプライバシーポリシーにも、利用目的、外部への提供、保存期間を書く必要があります。2つの文書で書いてあることが食い違うと、利用者はどちらを信じればよいか分からず、かえって信頼を損ねます。

漏えいが起きたときの対応

どれだけ対策しても、漏えいを完全には防げません。規約では、提供者が講じる安全管理措置の考え方、漏えいが起きたときに利用者へどう知らせるか、提供者が責任を負う範囲と上限を定めます。外部のAI会社や委託先で起きた漏えいも含めて、誰が利用者に対応するのかを決めておきます。

入力データに個人データが含まれ、法令で定める漏えい等が発生した場合には、個人情報保護法第26条に基づき、原則として個人情報保護委員会への報告及び本人への通知が義務付けられます(2022年4月1日施行)。利用規約で「通知しない」と定めても、法令上の義務が免除されるものではありません。

3. 責任:誰が責任を負うかを決める

出力の誤り

生成AIの出力には誤りが含まれることがあります。そのため「出力の正確性・完全性を保証しない」「最終的な判断は利用者が行う」といった定めが必要です。ただし、利用者が消費者の場合、提供者の責任を全部免除する条項は消費者契約法により無効になります。故意・重過失の場合を除くことや、賠償額の上限を定めるなど、法律の枠内で書く必要があります。

他人の権利を侵害したとき

出力が他人の著作物や商標に似てしまう可能性があります。利用者が出力をそのまま公開した結果、第三者から権利侵害を主張された場合に、誰がどう対応するのかを決めておきます。

AIならではの禁止事項

責任を負う範囲をはっきりさせるため、AIならではの使い方を禁止しておきます。違法な内容や他人を傷つける内容の生成、AIが作ったものを人が作ったと偽ること、サービスの仕組みを不正に引き出そうとする入力などです。外部のAI会社の規約で禁止されている使い方も、自社の利用者に禁止しておきます。

AIの変更・停止

使うAIモデルは、提供会社の都合で更新されたり提供が終わったりします。出力の傾向が変わる、一部の機能が使えなくなるといった可能性を、サービスの変更・停止の条項に含めておきます。そのうえで、変更や停止によって生じた結果について、提供者がどこまで責任を負うかを決めておきます。

AIで作った利用規約には特に注意

生成AIに「AIサービスの利用規約を作って」と頼むと、それらしい条文が出てきます。しかし、学習に使うかどうか、外部のAIにデータを送っているかどうかは、サービスごとに違います。AIはその事実を知らないため、実態と合わない規約になりがちです。また、条項を一つずつ直していくうちに、利用規約とプライバシーポリシーの内容がずれていくこともあります。

当事務所では、AIで作った利用規約・プライバシーポリシーを全文通して読み、サービスの実態とのずれや条項どうしの矛盾を確認して、書き換え案をお渡しする「AI生成文書チェック」を行っています。

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まとめ

生成AIを組み込んだサービスの利用規約は、「著作権」「情報漏えい」「責任」の3つを、入力と出力に分けて決めることが出発点です。経産省のチェックリストは、利用者が確認する項目の一覧であると同時に、提供者が規約に書いておくべき項目の一覧として使えます。

参考資料

最終確認日:2026年10月25日(法令・資料はこの日時点のものです)

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※無料相談は、ご依頼を前提とした方向けのサービスです。個別の法的助言のみをご希望の方はご遠慮いただいております。
この記事の執筆者

坂本倫朗(行政書士登録番号 第17081604号)。
IT業界出身の行政書士として、東京都を拠点に活動しています。
IT・Web業界を中心とした中小企業を対象に、契約書作成、利用規約、プライバシーポリシー、特定商取引法表記などの法務支援を全国対応で行っています。
生成AIにはできない、人間ならではの実務経験と文脈理解力・リスク判定力を活かし、安心してサービスを運営できる環境づくりをサポートしています。

運営:坂本倫朗行政書士事務所(東京都板橋区)
所属:東京都行政書士会

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