この記事の結論
2025年12月18日にスマホソフトウェア競争促進法(スマホ新法)が全面施行され、アプリ事業者は、アプリからWebの購入ページへ誘導したり、アプリストア以外の決済を使ったりしやすくなりました。
ただし、アプリストアの決済をやめて自社で決済すると、これまでアプリストアが引き受けていた次の3つを、事業者が自分で引き受けることになります。
- 返金と解約:誰が、どんな条件で、どこで受け付けるか
- 販売者としての表示:特定商取引法の表示と、申込み直前の最終確認画面
- 決済情報の扱い:決済代行会社に渡す情報と、プライバシーポリシーへの記載
手数料が下がるからと切り替える前に、この3つを利用規約・特商法表記・プライバシーポリシーに書き込んでおく必要があります。
スマホ新法とは
正式名称は「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(令和6年法律第58号)です。2024年6月19日に公布され、2025年12月18日に全面施行されました。
規制の対象は、スマートフォンのOS、アプリストア、ブラウザ、検索エンジンを提供する大規模な事業者です。公正取引委員会は2025年3月26日に、Apple Inc.、iTunes株式会社、Google LLCの3社を指定しました。
つまり、義務を負うのはAppleとGoogleで、一般のアプリ事業者に新しい義務が課されたわけではありません。アプリ事業者にとっては、これまでアプリストアの規約で制限されていたことが、しやすくなったという変化です。
アプリ事業者にとって何が変わったか
スマホ新法では、指定されたアプリストア事業者に対し、アプリ事業者による一定の外部決済手段の利用を妨げる行為や、アプリ外のWebサイトでの販売価格等の情報表示・外部サイトへの誘導を制限する行為などを禁止しています(第8条)。ただし、セキュリティ確保等を理由とする例外も設けられています。
そのため、スマホ新法によってアプリ事業者があらゆる外部決済を無条件で自由に使えるようになった、というわけではありません。実際に使う場合は、Apple・Googleが定める条件や手続きに従うことになります。
アプリ外での購入へ誘導しやすくなる
アプリの中に、Webの購入ページへのリンクを置いたり、Webで買った場合の価格やキャンペーンを表示したりすることを、指定されたアプリストア事業者が不当に制限することは禁止されました(第8条第2号)。
※リンクアウト:アプリから外部のWebページへ移動させて、そこで購入してもらう方法。
アプリストア以外の決済を使いやすくなる
アプリの中で、アプリストアが用意する課金の仕組み(アプリ内課金)以外の一定の決済手段を使うことを、指定されたアプリストア事業者が妨げることも禁止されました(第8条第1号)。
手数料は各社が新しい体系を公表している
AppleとGoogleは、日本向けに、外部決済やリンクアウトの場合の手数料を新たに定めています。手数料はゼロになるわけではなく、方法や条件によって率が異なります。具体的な率は変更されることがあるため、各社の公式の開発者向け案内で確認してください。
自社で決済すると、事業者が引き受けること
アプリ内課金では、代金の受け取り、返金の窓口、購入履歴の管理などを、アプリストアが担っていました。Web決済や外部決済に切り替えると、利用者から見た「売り手」は事業者自身になります。
1. 返金と解約のルール
アプリ内課金なら、返金の申し出はアプリストアの窓口が受け付けていました。自社で決済する場合は、返金に応じる条件、申し出の方法と期限、返金の方法を、自社の利用規約で決めておく必要があります。
サブスクリプション(定期購入)の場合は、解約の方法と、解約した月の料金の扱いもはっきりさせます。アプリ内課金とWeb購入が並ぶ場合は、どちらで買ったかによって解約の窓口が違うことを、利用者に分かるように書きます。
なお、「いかなる場合も返金しない」とだけ定める条項は、利用者が消費者の場合、消費者契約法によって効力が否定されるおそれがあります。返金に応じない理由と範囲を具体的に書くことが大切です。
2. 特定商取引法の表示と最終確認画面
自社のWebページでデジタルコンテンツやサービスを販売すると、特定商取引法の「通信販売」として、事業者名、所在地、連絡先、価格、支払時期、提供時期、返品(キャンセル)に関する事項などを表示する必要があります(第11条)。
さらに、申込みの直前に、価格や支払方法、契約期間などをまとめて表示する「最終確認画面」が求められます(第12条の6、2022年6月1日施行)。サブスクリプションでは、自動で更新されることや解約の方法も、この画面で分かるようにしておきます。
※最終確認画面:利用者が「購入する」ボタンを押す直前に、契約の主な内容をまとめて確認できるようにする画面。
3. 決済情報の扱い
自社で決済する場合、利用者の氏名やメールアドレス、購入履歴などを決済代行会社に渡すことになります。誰に、何を、何のために渡すのかを、プライバシーポリシーに書きます。カード番号を自社で持たない仕組み(決済代行会社が直接受け取る仕組み)を使っている場合は、そのこともあわせて示すと、利用者は安心できます。
見直すべき文書と項目
利用規約
特定商取引法に基づく表記
プライバシーポリシー
AIで作った規約で切り替えるのは危ない
生成AIに「アプリの利用規約に外部決済の条項を足して」と頼むと、それらしい条文は出てきます。しかし、どの決済方法を使い、返金をどこで受け付けるかは、アプリごとに違います。AIはその事実を知らないため、実際の購入の流れと合わない規約になりがちです。また、利用規約だけを直して、特商法表記やプライバシーポリシーを直し忘れると、3つの文書の内容が食い違います。
当事務所では、IT業界出身の行政書士が、アプリの購入の流れを確認したうえで、利用規約・特商法表記・プライバシーポリシーをまとめて見直します。
アプリの購入の流れを確認したうえで、利用規約・特商法表記・プライバシーポリシーをまとめて見直し、書き換え案をお渡しします。
利用規約の作成・チェックを見るまとめ
スマホ新法で、アプリ事業者はWeb決済や外部決済を選びやすくなりました。一方で、自社で決済すれば、返金・解約、販売者としての表示、決済情報の扱いを、自分で引き受けることになります。切り替える前に、利用規約・特商法表記・プライバシーポリシーの3つをそろえて見直してください。
参考資料
- 公正取引委員会「スマホソフトウェア競争促進法(スマホ法)」
- 公正取引委員会「スマホ法ガイドブック(PDF)」
最終確認日:2026年10月25日(法令・資料はこの日時点のものです)

