はじめに
現代のWebサービス運営において、プライバシーポリシーを整備していなければリスクにつながります。
個人情報保護法の改正や、クッキー等の技術進化、さらには欧州のGDPRなど、個人情報に関する法規制は年々複雑さを増しています。
にもかかわらず、多くの事業者が「テンプレートをそのまま貼る」「古い記述を放置する」など、適切とは言えない対応に留まっています。
(特に古い記述の放置が目立ちます。これは法的な要件を満たさないもので注意が必要です)
本記事では、プライバシーポリシーの基本構造から最新の法改正対応まで、実務的な視点から解説していきます。
ビジネスに必要な記載内容を確認し、抜けや漏れのない体制を整える一助となれば幸いです。
この記事は以下のような方に向けています。
- 自社Webサイトやアプリにプライバシーポリシーを掲載したい方
- 利用規約との違いや、書くべき内容を理解したい方
- 最近の法改正(個人情報保護法・Cookie規制など)に対応したい方
- 海外ユーザー(特にEU)向けのサービスを展開している方
プライバシーポリシーの基礎理解
そもそもプライバシーポリシーとは何のために存在するのでしょうか。
これは、Webサービス運営者がユーザーから取得する情報について「何を・どう使うか」を明記し、法的にも倫理的にも信頼を獲得するための文書です。
日本では、個人情報保護法(通称:個情法)がその整備を義務付けています。
特にWebサービスやアプリを運営する事業者は、ユーザーとの接点がある以上、避けて通れないルールとなっています。
利用規約との違いとは?
「利用規約とプライバシーポリシーって何が違うの?」という質問はよくあります。
簡単に言えば、利用規約は「契約に関すること」、プライバシーポリシーは「個人情報の取扱いに関すること」を記載します。
利用規約は、禁止行為や免責事項、準拠法など、主にサービスの「利用ルール」を定めます。一方、プライバシーポリシーは、氏名・メールアドレス・閲覧履歴など、ユーザーから収集する情報とその使い道、第三者提供の有無などを記載します。
詳しい違いは、以下の記事でも解説しています。
プライバシーポリシーで最低限書くべき項目とは?
プライバシーポリシーに最低限記載すべき項目は、以下の通りです。
- 情報の利用目的
- 第三者への提供有無とその範囲
- 委託先がある場合の対応
- 開示・訂正・削除の求め方(本人からの請求方法)
- セキュリティ対策に関する基本方針
- お問い合わせ窓口
- プライバシーポリシーの改定に関する情報(告知方法など)
これらの項目が漏れていると、個人情報保護法違反に問われる可能性があります。
「個人情報」と「個人関連情報」の違いにも注意
2022年の法改正で登場した新しい概念が「個人関連情報」です。
これは、直接個人を特定しないが、特定の個人と関連付け可能な情報(例:クッキー、広告ID、端末情報など)を指します。
これらもプライバシーポリシーでの明示が推奨されるため、特にCookieやアクセス解析ツールを使っている場合は、クッキーポリシーとの統合または併記が必要です。
GDPRと越境対応のポイント
Webサービスが世界中からアクセス可能である以上、日本国内法だけでなく、海外の法規制にも目を向ける必要があります。
特に注目すべきなのが、EUの「GDPR(一般データ保護規則)」です。
GDPRは、EU市民の個人データを保護するための法律であり、日本の事業者であっても「EUからのアクセスがある」だけで対象になる場合があります。
GDPRに該当するサービスを提供している場合、以下のような追加対応が必要となります。
- データ保護責任者(DPO)の明示
- EU域外移転に関する記載(適切な保護措置の明示)
- データ処理の法的根拠(同意・契約履行など)
- ユーザーの権利(アクセス権、訂正権、削除権など)の明記
- クッキーの明示的同意(オプトイン方式)
対応が不十分な場合、最大で「世界売上の4%」という高額な制裁金が科されるリスクがあります。
具体的な整備ポイントについてを、以下の記事で詳しく解説しています:
日本国内向けのサービスであっても、将来的な海外展開や、偶発的な越境利用を想定して、最低限のGDPR対応をしておくのが安全策といえます。
最新の法改正と対応チェック
日本でも、個人情報保護法は数年ごとに見直しが行われており、直近では2022年、そして2024年にも改正が実施されています。
2024年改正で注目すべきポイントは、以下の通りです。
- クッキー等の「個人関連情報」の定義強化と同意要件の明確化
- 外部送信規律(外部への情報提供時の表示義務)
- 利用目的の変更に関するガイドライン厳格化
- オンライン広告・マーケティングに対する監視強化
特にCookieやGoogleアナリティクス、広告配信ツールを使っているWeb事業者は、クッキーの取得状況やその利用目的について、プライバシーポリシー内で明確に説明する必要があります。
場合によっては「バナーでの同意取得」や「オプトアウトの手段提示」も求められるため、単に文章を書くだけでは済まなくなっています。
2024年法改正の概要と対応方法については、以下の記事も参考になります:
見落としや誤解が多いテーマでもあるため、プライバシーポリシーを更新する際は、最新の法改正を反映できているかを必ず確認しましょう。
プライバシーポリシーの運用と見直し
プライバシーポリシーは「一度作って終わり」ではありません。実際の運用やサービスの変化に応じて、適宜見直し・修正が必要です。
たとえば、新しい機能を追加したとき、新たなデータ収集を始めたとき、外部サービスを導入したときなどは、プライバシーポリシーの内容も変更が求められる場合があります。
変更した際にユーザーへ告知する方法も重要です。Webサイトのトップページに「改定のお知らせ」を出したり、メールや通知機能で明示的に伝えるなど、信頼を損なわないための配慮が必要になります。
また、他の法的文書との整合性も意識しましょう。
たとえば、利用規約では「ユーザー情報を目的外に利用しない」と書いているのに、プライバシーポリシーでは「広告目的で自由に使う」となっていたら矛盾が生じます。
定期的な見直しと、専門家による監修を受けることで、万が一のトラブルや行政指導のリスクを最小限に抑えることができます。
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なお、ウェブサービス全体の法的な理解については、以下が参考になります。

